「見るor観る」と 「聞くor聴く」
先日の「ギターと絵画の交わるところ」公演の備忘録として
今日はブログを書こうと思います。
良く公演後に聞かれる感想として、「演奏の時に背景に何か絵が映し出されても良かったのでは!?」というご意見や、「演奏しながら解説があった方がより分かりやすかった」という感想をお聞きします。
確かにそういうアイデアもあるのは承知しています。
ただ、今まで試みたことはありません。
以下のことは、(コンセンサスを得て書いているわけではないという意味で)川瀬さんはどうお考えなのか分かりませんが、これまでの打ち合わせの経緯から同意見だと信じて書きます。
いつも意識しているのは、
音楽(ギター演奏)を聴きたくて来た方々にとって絵画が邪魔な存在になったり、
絵の話に興味がある人たちにとって、音楽を聴くのが退屈な時間にならないように
時間配分や話の内容、選曲を熟慮しているということです。
少なくとも、自分の得意分野だけを勝手に話しをし、弾きたい曲を勝手に演奏し、お互いのことには干渉し合わない、というのは
それは貴重な2時間を等分しているだけで、何故この2人が同じ舞台で、ひとつの企画の中に存在するのか、その説明がつきません。
それでは、会場に来た方達は何を聴きに来たのか? 何を観に来たのか?
舞台上でそれぞれ勝手気ままに仕事をする2人をなんとなく見て過ごし、話や演奏を聞き流す、
今日の公演はいったい講演会だったのか、何故そこに演奏があったのか、
結局は自分達とはかけ離れた世界に生きている人達なんだな、この2人は
という感じで帰って欲しくない!といつも願いながら、打ち合わせを重ねています。
最近読んだ本で、こんな話が書いてありました。
”大きな地震が起きた直後、海辺にいたゾウ達が一斉に高台の方へ走り出したそうです。
それを不思議そうに見ている人間たち。
やがて、目の前には大きな津波が押し寄せて来たのを見て
慌てて人間たちも高台へと走って行った”
ゾウ達はおそらく、地震直後に通常では聞こえて来ない異常な音を聴き、危険が迫っているのを察知していち早く逃げ出した。
でも、人間は視覚的に光景が見えて来ないので、その異常な音が聞こえなかった、というより気付かなかったということなんでしょうね。
テレビや映画などで見ることと聞くことが当たり前になった昨今、「見る」と「聞く」ということが独立した機能ではなく、同一化してしまっているのかな、と思うことはしばしばです。
ラジオまではそれが無かった。耳に入って来る話しを聴いて、それがどんな物なのか、どんな風景が広がっているのか想像をかき立てる。
音楽を聴いて、ジンと来る。演奏者がどんな人なのかイメージを膨らませてみる
ほんの100年前までは、そんなことが当たり前だったのが
最近はインターネットが普及したこともあり、聞いたことと見たことがあっという間に一致してしまうんですよね。
コンサートも、良く「今度観に行くね!」っていうセリフを耳にしますね。
何気なく使う一言なのですが、演奏会も聴くのではなく、観ることも目的に入るのか、と痛感させられます。
だからこそ、出来るだけ良い印象の衣装を選んだりするんですが、
それはさておき、
本来は、音楽を「聴いてもらう」こと!だと演奏家の立場としては信じたいです。
絵は「観賞するもの」だと思っています。
言葉の使い方って難しいです。言語学者ではないので、上手く説明できないですが
見る=目に飛び込んでくる、 観る=意識をもって目をそちらに向ける
見学する、鑑賞する、というふうに使い分けますからね。
聞く=耳に飛び込んでくるものを判別する、聴く=自らの意思で耳を傾ける
見聞を広める、公聴会、など
観ることと聴くことに本来は言葉は不要なはずなんですが、
言葉があることによって、その作業がより分かりやすくなることはあると思います。
ただ、それが同時進行だと本来感受できるものが少なるのではないか?と危惧している、というのが本音です。
もしかしたら、演奏中に背景に絵を映し出すことによって、「音楽を聴き、絵を見る」状態に出来るかもしれません。
観せ方を工夫すれば、「絵を観て、音楽を聞き入る」ことが可能かもしれません。
でも、どうなんでしょうね。知恵を絞って、違った視点から発想していかなければいけないなと思います。
耳は数少ない、身体の外側に付いている大切な器官
目はそれを覆うことが出来る機能がついている数少ない器官
舞台上でその2つの機能を交わらせなくても
皆さんの心の中で交わってくれればいいのかな?と思ったりします。
2010年7月からスタートした「ギターと絵画の交わるところ」
毎回のようにかけつけて下さる方々からの感想、初めて聴きに来て下さった人達からのご意見、
そんな皆さんからの貴重な言葉を聞いて、また原点に立ち返り
どうすれば、さらに満足していただけるような企画になるのか想像をして
より観ごたえがあり、また聴きたい!と思っていただけるような企画に高めて行きたいと思っています。
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